第26回スタンダード・チャータードバンコクマラソン2013 レースレポート【その4】
2013-11-29 Fri 23:55
モタモタしているうちに明日はもう次のレースです。

つづき、行きます。

   第26回バンコクマラソン2013 レースレポート【その4】   

高速道路を降りてコースは一般道に入り、レースは終盤戦へと突入した。
36キロ地点から3キロくらいは走っただろうと思った所でようやく次の表示が現れた。
しかし、そこにあった表示を見て、おれはガックリと力が抜けてしまった。

その表示には37.5キロとあったからだ。
でも、そう思ったのはもしかしたらおれの勘違なのかも。
後で時計をしたら、どうも36キロらしきラップは残ってない。
残っている34キロと思われるラップからだとすれば相応のタイムだ。

意識がもうろうとする中、34キロまでしか来てないのを
いつの間にか36キロまで来たと思ってしまい、
そろそろ39キロくらいだろうと思い込んでしまったのだろうか。


残りは3キロほどだと思っていたのが、まだ5キロあるという。
相変わらず治まらない腹の痛みを抱えて、果たしてゴールまで辿り着けるのか。
泣きたい気持ちで振り向いたが、後続の選手の姿は見えなかった。

しかし、S藤さんがすぐそこまで迫っているのは明らかだ。
弱気になってスピードを落としたりしたら、すぐに追いつかれてしまうだろう。
おれにはもう、迷っている時間も泣き言を言っている時間も無い。


死ぬ気でゴールを目指す。


それしかない。
それ以外におれの行く道は存在しない。
おれにはもう、他に選択肢はないのだ。

残りが5キロだろうが10キロだろうが、
ゴールを目指してありったけの力を振り絞る。
ここまで来たら、もう足を温存する必要もない。

とにかく全力で走る。
辛かろうが何だろうが、
死ぬ気でゴールを目指すしかないのだ。



まだ真っ暗な闇の中、プラ・スメン通りをひた走る。
でも、沿道には次第に応援の人の姿が現れはじめて、
ゴールが近づいてきていることを思わせた。

すぐ横を二人乗りのバイクがかっ飛ばしていく。
もちろん、オフィシャルというわけではなく、要するに交通規制が甘いのだ。
日本では考えられないけど、特にとがめられたりもしない。

普段なら憤慨するとこだけど、腹が痛過ぎて腹も立たない。
とにかく自分のことだけで精一杯で、
他人の行動なんてどうでもいい感じだった。

100メートルくらい前にひとり選手が走っているのが見える。
かなりへばっているらしく、走りに力強さが感じられない。
そんな彼に追いつけないのだから、おれも間違いなく精彩がないのだろう。

スタート直後に渡ったチャオプラヤー川に架かるプラ・ピンクラオ橋をくぐる。
右に折れたり、左に折れたりしながら国立劇場、タマサート大学の横を過ぎていく。
高く長く続く壁が左手に現れると、その壁の向こうには
目指すゴール、サナム・ルアン(王宮前広場)があるのだとわかった。

ここをぐるっと回ったら、そこがゴールだ。
もう2キロを切っている。
また腹が強烈に痛んだが、あと10分足らずの我慢だと自分に言い聞かせた。

目の前に王宮の建物が見えてきてた。
もうすぐ、もうすぐゴールだ!
がんばれ、おれ!

腹を押さえながら、痛みに耐えながらも足に力を込め続けた。
所々でカメラマンがコースに出てきて、暗闇の中カメラを構えていた。
辛かったが、腹を押さえるのをやめてサングラスを外して頭に掛けた。

写真に残るのなら、情けない顔で写りたくない。
そう思うと、人間というのは(オッサンというのは?)現金なもので、
これだけ痛いのにもかかわらず、カメラを向けられた時だけは
何ともないみたいなふりができるのだった。


そして、ついに残り500mの表示が見えた。
残り5キロの表示からしたら明らかに短いと思った。
最後まで距離表示はあてにならなかったが、短い分には文句は無い。

最後のコーナーを回ると、大きな歓声に包まれた。
実況中継のようなアナウンスが聞こえる。
前を行くランナーはいない。後ろを振り返っても誰も走ってない。
歓声は、アナウンスは、おれだけに向けられたものだった。

「ひろさん、ラスト!がんばれ!」

そこには女房が立っていた。
この場所を目指して、おれは必死で走ってきた。
ここに帰るために、なりふり構わず走ったんだ。

女房の声に応えたかどうかはまったく覚えてないが、
さらにスピードを上げたのだけは良く覚えている。

「帰ってきたぞ」

そう、心の中でつぶやきながら。


ISOMA HIROYUKI ,From JAPAN!


自分の名前がアナウンスされた。
今まで走ってきた闇が嘘みたいに
おれの身体は明るい光に包まれていた。

両手を掲げ、
何度も強く拳を握りしめ、

おれは、ゴールした。



ゴール後にインド人みたいな風貌をした偉いひと(たぶん)が近づいてきて、
「おめでとう! 記念撮影するから、こっち来い、こっち来い」と、
おれをひときわ明るい場所に連れて行った。

そこでは別なエイジクラスの優勝者と思しき選手が、
記念撮影とインタビューを受けているところだった。

「スゴイじゃん、優勝だよ。疲れただろ? 悪いな、1分だけ待っておくれ」
とインド人風の偉いひと(たぶん)が言った。
「いいけど、おれあまり英語しゃべれないよ」と言ったら
「だいじょぶ、だいじょぶ!1分だけ待て」と笑った。


S□□TO MASAHIDE ,From JAPAN!


S藤さんの名前がアナウンスされたのが聞こえた。
見ると、S藤さんがガッツポーズでゴールしているところだった。
おれがゴールしてから約1分後、おれのすぐ後の順位だった。

「お、また日本人が来たじゃん。スゲー!」
インド人風の偉いひと(たぶん)が感心した風に言った。
「あれ、おれの友達! おーい、S藤さーん!」とおれが叫ぶと、
「S藤さーん!」とインド人風の偉いひと(たぶん)も叫んだ。

S藤さんが来ると、インド人風の偉いひと(たぶん)は、
「一緒に記念撮影するからな、1分だけ待っておくれ」と笑って言った。
結局、前の撮影がなかなか終わらず、インド人風の偉いひと(たぶん)は、
「疲れただろ。悪いな、1分だけ待っておくれ」と繰り返し言った。

その時は、「1分、1分って、いくら待っても1分じゃん!」
とツッコミを入れようと思ったが、
あとでよくよく考えたら、「1分だけ待って」という意味ではなく、
Just a minute =「ちょっと待って」だということがわかった。

言わなくて良かった。


    【    つづく   】    

ようやくゴールはしましたがこれで終わりじゃないです。
まだつづきがあるんです。申し訳ありません。
すったもんだのドタバタ劇みたいなものですが、
これから海外マラソンを走る方の参考になるかも知れません。



参考にならないかも知れません。

おやすみなさい。
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| 月下独走 |

ひろさんって、こんなオッサン。

<span style= 【 がんばろう 】 


'06年6月、10Kmレースで惨敗。
悔しさから「来年は33分台で走る!」ことを宣言。
その過程を記すためにブログを始める。
しかし、一年後のレースでリベンジを果たせず。

'10年2月、青梅マラソン10km40歳台の部において33分30秒で2位。
4年越しでようやく目標達成!
しかし、ここで立ち止まるわけにはいかない。
次の目標は当然、「32分台で優勝する!」

そんなおれも、ついに50歳。
まだまだ俺は進化し続けるぞ!
今年もガンガン、走るぜーイェイ!!

こんなオッサンランナーだけど、
どちらさんもヨロシク~っス♪